ワルツのあとで/スティレオ/8264

 実店舗で古い品物を探すのは至難の業だ。世界では毎日たくさんの新商品が生み出されている。
 それは映画やドラマも同じことで、思いつく限りのショップをはしごしてもダメだった。この街は何でもアリだけど、フツウの品物はそこまで充実していない。異界人向けの商品を並べるスペースに圧される分だけ外より品ぞろえが悪いぐらいだ。
 結局ネット通販にした。タイトルを入れて検索すれば五秒で発見。一分でオーダー完了。最初からこうすればよかった。
 検索して見つかったのは中古ソフトばっかりなので、状態の良さそうなもの、その上で値段の安いものを吟味する。
「ん?」
 同じキーワードを含むタイトルがノイズのように混じる検索結果の中にちょっと気になるものを発見した。
 赤い安売りマークがついている。安いものには弱い。そこまで味に期待できなくても見知らぬ菓子が山積みで安売りしていたら一個ぐらい買ってしまう。
 そんな心理でカーソルが購入ボタンに吸い込まれていた。

 狭い部屋に暮らしていると「デカいソファって無駄だよな、所詮椅子なのに」と思う。断じて貧乏人の負け惜しみではない。でも最近その無駄なデカさの価値を思い知らされてしまった僕である。
「あの、ちょっとトイレ……」
「いいよ」
「じゃあ放してくださいよ」
 抗議したら余計にきつく抱きしめられた。
 今日は随分と疲れてるな。ザップさんが結構なお偉いさんの愛人を知らずに横取りしちゃっマズイことになっちゃったしな。でもスポンサーが懇意にしている人物まではさすがに把握できないんだし、当たり所が悪かったっていうか、さすがのザップさんも今回は責められないんじゃないかな。いや、そもそも誰の愛人であろうと寝とった時点で悪いのか?
 いずれにせよ血界の眷属絡みのものを含め、立て続けに起こった事件に忙殺された一週間の締めくくりにこれでは縊り殺したいと思うのも仕方ない。
 以前からオフになったらと約束していたので、仕事が終わるのを待って一緒にスティーブンさんの部屋に帰ってきたんだけど、食事を済ませシャワーを浴びて落ち着いた途端にこれだ。積もる愚痴があるようだけど、言っても仕方ないと思ってるんだろう。口から吐き出す代わりに僕を抱き枕にしてソファに転がっている。
「眠いんならベッドに行きましょうよ」
 何の含みもなく休ませるつもりで提案したのに、
「積極的だな」
「違います」
 そういうときだけ普段の調子を取り戻して不敵に笑う。その元気で本当にベッドまで移動して布団被って寝てくださいよ。
「眠いわけじゃないんだ」
「ずっと徹夜続きじゃないですか」
「大丈夫。それより約束だろう?」
 僕が持ってきたバッグを指さして腕を緩めた。一緒に映画を見る約束なのだ。
 素直に休んでくれる気がないみたいだから素直にDVDをデッキにセットした。
 もう二度見ている映画の初めて見る冒頭が大きなテレビ画面に流れ出す。野外上映会とドライブインシアターで上映しているところへ二度立ち会っているんだけど、どちらも落ち着いてみるどころではなくて断片的な記憶しかないのだ。
 内容はベタなラブストーリーで職場の上司と二人で見るにはお寒いヤツだけど、多分、今は上司と部下じゃない。

 リモコンだけ持ってソファに戻ると広いソファの真ん中で体を起こして膝を開いた彼が待っている。無駄に広いのに座っていいのはその膝の間だけ。座るとすぐにセーフティーバーが自動で装着されるジェットコースターみたいなシステムになっている。
 映画は古い作品で、立派なスピーカーがもったいないような音質でワルツのメロディを奏でた。
 ヒロインはお嬢様で、男は彼女の父親を強請ろうとしている悪い男だ。目的のために彼女に近づくが、口説いているうちに自分の方が夢中になってしまう。
 上司は片手に持ったグラスの酒を時折舐めながら見ていた。話が進み、序盤の見せ場に差し掛かる直前でグラスをローテーブルに置いた。画面の中では男が彼女を抱きしめる。当然彼も同じ仕草で抱きしめてくる。
 ベタな手口だ。これを女性相手に過去に何度やったのかな、なんて思ってしまったので残念ながらときめき損ねた。
 間もなく映画は次のシーンに移ったけれど、彼は僕の肩に顔を伏せたままだった。眠いなら寝てくれていいんだけど。映画が終わるまで付き合ってくれようとしてるなら、僕が言い出さないと寝てくれないかもしれない。再生してるのはレンタルじゃなく、購入したDVDだからまたいつでも見られるし。
「スティーブンさん…」
 やっぱりベッドに行きましょう。言おうとした言葉が首筋を吸われて引っ込んだ。チュッチュッと軽い音を立ててあちこちに吸いついて、触れた地点を結ぶみたいに舌先でなぞり上げる。肩がびくついてしまう。これの先にどんな愛撫が待っているか知っている身体がフライング気味に反応した。
 ベッドへ、なんて言葉をこのタイミングで口にしなくて良かった。どうせこの調子だと会場がベッドでなくソファになるという、それだけの話なんだけど。我慢できなくて自分で誘った、みたいになるのは回避できた。多分。
 部屋着のハーフパンツの裾を軽くめくって太ももを撫で上げられる。男の足に何の価値があるのかはわからないけど、さも愛おしそうな手つきで丁寧に触れられると、自分の貧相な足でもそれなりに興奮を誘う何かがあるような気がしてくる。自分にはその価値がわからないけど。
 敏感な内ももを指で擽られて、膝を閉めようとすると両手で強引に開かれた。ソファの上に立てた彼の膝が足の間に挟み込まれて閉じられない。強制的に開脚させられたままじれったくなる動きで一枚ずつ布をずらして、直に股間の昂りを握りこまれる。
 反射的にこぼれそうになる「いや」という言葉を意識的に飲み込んだ。本当に嫌なわけじゃないけど、口にしたら彼は全てやめてしまいそうだから。すべて受け入れる、羞恥心まで。
 耳に鼻を擦りつけられて顔を向けると、深いキスが待っている。毎日平然とモノを食べて歯を磨いて喋る口がどうしてこんなに気持ちいいのかわからない。上顎や歯列を舐められて発生したもどかしさが、背筋を伝って下半身に溜まっていく。我慢できずにもぞもぞ動かした腰に固いものが当たった。
 すごいよな。女の人だってよりどりみどりのスティーブン・A・スターフェイズが、男でガリガリで美少年ってわけでもない僕なんかのためにこんなになってる。
「すまないけど少しの間映画は諦めて」
 そんな断りを入れてソファに押し倒された。履物を下ろして足の先からも抜き取られる。裸の膝の間にきっちり着衣したままの身体が割り込んで体重をかけられた。僕が押しつぶされない程度に。その身体と身体の間にできる隙間が気に入らなくて背中に回した手の指が、上等なシャツの布地を引っ掻いた。

 最初はキスだった。外気に触れさせているところで触れ合うのはまだ抵抗感も少なかった。嫌悪感もなかったし、掠めるように一瞬で終わる触れ合いに拒絶も何もなかった。
 おまけに、人のいる場所で目を盗んでやられる。その場で文句なんか言ったらこっちが恥ずかしい思いをする。それでなくても、僕は何か理由のあることだとばかり思っていて、それを確かめるまで拒絶も保留していた。結局、疑っていたような理由はなくて、単純な好意だったんだけど。
 告白されても歳だって離れすぎてるし、相手は女の人に不自由したことのなさそうな人だ。見た目の釣合も取れないし、男同士だし、性格から考えても全く理解が及ばない。理解できないからイエスかノーかの決断を下す以前の問題だった。つまりノーと言わなかった。
 そのうち自宅に招かれて、空気に流されてこういうことになったんだけど、他人に触られるのも、見られながらイクのも初めてで、いっぱいいっぱいの僕にこの人は何て言ったと思う。
「やっぱり君は迂闊だよ」
 好意を承知でホイホイ家についてきたり、簡単に流されて身体を好きにさせたり。確かにそうかもしれないけど、やった本人がそれを言うのか。納得いかなくてさすがに怒った。「アンタがそれ言っちゃうんすか!?」って。
 頭が良くていつでも圧倒的に正しい上司に怒ったのは初めてだった。ザップさんなんかと違って敷居が高かったし。一回り以上も年上と思うとなかなか意見もし辛いものだ。仕事場で多少厳しい物言いをされても刃向ったことなんかなかった。でも、股間をさらけ出すことに比べれば苦情をさらけ出す方がよっぽどハードルが低い。
 そうしたら面白そうに「だよな」なんて頷いて軽いキスを繰り返して誤魔化されてしまった。僕は僕で、そんなやりとりを経ても懲りずに上がり込んでは好き放題されているんだけど。
 結局、最初から僕の気持ちは決まっていたんだろう。頭の整理が追いつかなくても、何度チャンスを与えられても、拒まなかった。それが間違いのない答えだ。
 この人の恋人になりたい。

 いつもと同じパターンで一人だけ下半身を露出して射精して、胸を喘がている。それと対照的に、シャツの腹が僕の体液で汚れている以外はどこも乱れたところのない彼が、やることは終わったとばかりに体を離そうとした。その袖をつかむ。
 映画の中では彼女の父親が失脚して、男が彼女を口説き落とす理由を失ったところだった。彼女もまた、父親を失脚させた相手の口から男の正体を聞かされる。二人はそれぞれ思い悩む。そして、別れを告げるために約束のパーティーを訪れるのだ。以前のように笑顔で手を取り合うことが出来ない男に彼女が告げる。屋敷を手放し遠くへ移り住むことと、二度と会えないこと。それから、男の正体を知ったことを打ち明けて、男に手を差し出す。
 ドライブインシアターで手を握り合って見た物語と重ねながら耳だけでセリフを追った。目は自分の上にいる人に向けていた。興奮が抜けきらない乱れた身体で。
 引き寄せてねだればキスはいくらでもくれる。だけどウエストに手をかけるとやんわり手首を掴んで止められた。いつもなら諦めるところだけど、今日は引かないことに決めているのだ。強引に前を開こうとしたら、
「いい、やめなさい」
 明確にストップをかけられた。ひとのムスコばっかり弄りまわして自分のものは見せもしないとはアンフェアにも程がある。彼が体を起こして逃げたのを追って起き上がり、シャツの襟を掴んで素早く照準を合わせ、頭を軽く逸らし、助走をつけて顎を引く。頭の固さにはちょっと自信があるのである。固い額がクリティカルヒットした。
「なっ…」
 怯んだ隙に下から抜け出し、彼の肩を押してポジションをひっくり返した。見下ろした先で彼が目を真ん丸にしている。僕はアンタが今まで相手にしてきたちょろい女性たちとは一味違うのである。
「言ったでしょ。アンタとずっと一緒にいるって。スティーブンさんがなんとかしてくれないと、僕一生未経験のまんまなんすからね。責任取ってくださいよ」
 スクリーンのヒロインが躊躇う男の手を強引に握ってダンスフロアに躍り出る。ワルツのステップ。優雅に揺れるドレス。
 呆気にとられている彼の目をキスで覚ましたら、両手を上げたポーズで観念してくれた。
 自ら股間をくつろげてシャツのボタンをはずしていく。首筋から胸から下半身まで這い回るように描かれたタトゥ。デスクワークが多いとは思えない鍛え上げられた腹筋。初めて見る生の股間。
 あ、早まったかも。別に小さいだろうと思ってたわけじゃないけど、他人の勃起したところなんか見比べることもないし、自分基準だったからもうちょっと控えめサイズを想定していたというか、想像力が足りなくてなんとかなると思っていたのが、実物を前に「ムリかも」に変わったというか。
 身長差に比例しているわけでもないだろうが、彼と比べたら僕のものなんかキッズサイズだ。完膚なきまでの敗北感を味わった。そんなことより、こんなのを直腸に入れたら腹を突き破っちゃうんじゃねーの。
 優雅なワルツをバックに全速力で頭が下世話なことを考える。
「どうかしたかい、レオナルド」
 ああ、全部見透かしてニヤニヤしている。
「色んな期待を膨らませてもらってるところ悪いけど、こういうことには準備が必要だ。寝室から持ってきてもらいたいものがあるんだが」
 下半身丸出しで寝室の引き出しからラベルのない瓶と避妊具を取って戻ってくる。彼は離れた時と同じ姿勢でシャツとスリッパしか身に着けていないお漏らしした後の子供みたいな恰好の僕を観賞していた。映画見ろよ。最後までやるとなったらさっそく向こうのペースだ。
 再び僕を馬乗りにさせ、生の尻を鷲づかみにされた。これからやることが頭にあるお蔭でドキッとしたけど、尻を揉まれるぐらいはまだ許容範囲内だ。こんなことでビビっていては先が思いやられる。
 手の動きで誘導されて尻を突き出す格好になった。恥ずかしくて肌蹴た胸に顔を埋めていると、尻にひんやりしたものが垂らされた。直感的に先刻準備させられた瓶の中身だとわかる。それを穴に塗り込める動きで指が侵入してきた。
 もっと痛くて、痛みに耐えることで意志の固さを示すような妄想もしていたんだけど、指一本ぐらい簡単に入り込んでしまった。冷静に考えたらそうだ。その穴の本来の用途からして。
 だけど内壁を擦られるのは未知の感覚だった。痛みじゃない、内臓を触られている恐怖で身体がこわばる。そういうのって向こうにも伝わるものだ。指の動きを止めて反対の手で頬を撫でられた。促されるまま顔を上げるとキスされる。舌が口の中をかき回す。それで意識が逸れたのを狙って尻に埋め込まれた指も内部をかき回す。本番はまだまだなのに上も下もぐちゃぐちゃに犯され尽くした気分だ。
 ゆっくり慣らされたお蔭で指が増えても痛みはなかった。それどころか内側の気持ちのいいところを擦られると堪え切れなくて声が出た。そんなの聞かなくたって感じていることはバレバレなんだろうけど、恥ずかしくて手で必死に口を塞いだ。そういう悪あがきもこの人にとっては面白いらしく、目を眇めてニヤニヤしている。経験値の違いを見せつけられてるみたいでちょっと悔しい。
 指が引き抜かれ、身体を入れ替えて組み敷かれて、指と違う先端が押し当てられた。不安と興奮と、おまけに一年前には想像もしていなかった尻の処女喪失という謎の感慨で目が回る。
 トロトロに解された穴をグッと押され、思わずギュッと目を瞑った。
「う…あっ、あ……」
 もうこれ以上広がらないってぐらいまで縁を引き伸ばされて、中は指で慣らされて薄まった内臓に触られる恐怖を思い出させた。薄い粘膜を突き破られる妄想で浮かれた脳みそが身体ごとガチガチになる。
「大丈夫、君の気持ちいいことしかしないよ」
 途中で止って髪や頬を撫でられた。唇を寄せようと体を曲げた拍子につながっている部分の角度が変わって僕がビクついたから指の背で。
 親指で唇を擽ってくるんでつい咥えたら指の根元まで押し込まれた。舌を使う。ざらざらした皮膚の感触が舌に気持ち良かった。下半身は痺れていて自分からせがんだにもかかわらず全く奉仕できていないし、中断させてしまって彼だって辛いだろうと思って、ちょっとでも喜んで貰えないかと思って。
 しばらく好きにさせてくれた後で雑に親指が抜き取られた。唾液の糸が切れる前に指に絡みついた涎を唇に塗りたくって、乾いた唇から熱い息を吐いた。
「なあ、それは計算なのか、天然なのか、どっちなんだ」
「はあ…?」
 口元をべたべたにして間抜け面をした僕に呆れ駄々漏れのため息を落として、両手で膝裏を掴んだ。休憩は終わり。さっきよりも心なしか強引に身体を進めていよいよ死ぬかと思った。「一生」なんて言葉を捧げたけど、それは別に今すぐ死ぬという意味ではない。苦しくて呻くと少しだけ角度を調節して、でも一度引き抜くようなことはしてくれない。
 瞼の裏に散る星を数えているうちに腿の裏に彼の体が当たって全て体内に納まったことを知った。腹どころか粘膜を突き破る大参事はなかった。
 さすがにその深さで勢いをつけて抜き差しされることはなかったが、半端な浅さで動かれると逆に弱い部分をダイレクトに抉られた。気持ちいいことしかしないってのは度が過ぎると拷問みたいなんだって学習させられた。自分でコントロールできない快感で頭がおかしくなる。何だかわからないまま涙はボロボロこぼれてくるし受け入れている部分は熱いし、途中降りてきたキスはとんでもなく甘かった。
 あぁ、優しくされ愛を囁かれるたびに裏の思惑なんか疑っていたことを心の底から謝らなくちゃいけない。僕が残念な童貞で初めてのことに盛り上がりすぎちゃってそう思ってるだけって可能性も残ってるんだけど、こんなガリガリで男の悦ばせ方なんか身についてるわけもない身体でそんな熱っぽい目をしてくれてる。ずっと知りたいと思っていた好意の理由なんて理屈じゃないんだ。貴方じゃない僕には理解できなくても、疑う必要がないってことはわかる。
 涙で滲んだ青い眼にキラキラした光をまとった彼が見える。

 気が付くと映画は終わっていて、機器のスイッチ入りっぱなしで画面は真っ暗になっていた。
 一瞬だけ意識を飛ばしたような気がしてたのに、彼はすっかり支度を整えていて、僕も拭き清められていた。足をすり合わせた感触で服までは着せてもらえていないことを悟って、毛布を少しめくって案の定素っ裸の下半身を確認した。
「起きたかい」
 彼はすでに平常運転で、やわらかな湯気立つカップ片手に振り向いた。
 いつものつもりで体を起こそうとして、未だかつて経験したことのない下半身の怠さに驚いた。馴れない姿勢を取らされていたせいもあって身体もギシギシいっている。
 動きを止めたのを察して「そのまま寝てなさい」と言われてしまった。一旦落ち着いた分余計に恥ずかしくて顔から火が出そうになりながらも、お言葉に甘えてふかふかのクッションに埋まり直す。
 デッキのスイッチを切ろうとした彼が一枚のケースを取り上げた。最初の映画を再生するときにまとめて二枚鞄から出して置いたうちの一つだ。
「なんだ、続編も買ったのか」
 三度見て三度とも真面目に見ることのなかった古い恋愛映画の続編である。一作目は今も結構人気が高いようで、中古でも状態のいいものはあまり安売りしてなかったのに、続編は本当に公式のものなのか疑わしいほどの値段で叩き売られていた。大体事情は察せられるけど安さ故に買ってしまったのである。
「続編の方は公開直前まで話題だったのに、あっという間になかったことにされたレベルの駄作でね」
 大体そんなことだろうとは思ってましたけどね。だって都会の悲恋がテーマだったのに続編のパッケージは牧歌的な田舎が背景なのだ。
 それでも一応買ったものだし、一度ぐらいは見ておこうか。途中で寝るのも惜しくないし。という非常にモチベーション低く再生ボタンが押された。
 足を動かすのも億劫なので上司にパンツを拾わせ赤ん坊みたいに穿かせてもらって、あっちの希望でクッション選手交代で膝枕をされている。
 一作目と同じロゴから始まり、馴れない田舎暮らしに奮闘する元お嬢様が映し出された。筋書きは田舎で別の男と親しくなるも、組織を抜けてボロボロの男が逃げ延びた田舎街で運命的な再会を果たし、何だかんだあって田舎男を振ってボロボロの男と駆け落ちする。同じ役者を主演に立ててもこうなるのかと思う程の駄作だった。
 仕事とセックスでお疲れの彼はボロボロの男が出てくる前に座った姿勢で眠りはじめた。膝枕じゃなく添い寝にしてもらえば良かったな。ソファは無駄に広いんだし。
 身体が落ち着いても頭の興奮が抜けない僕は一人で映画の行方を見続けた。
 終盤にまたワルツを踊るシーンがある。きらびやかなパーティー会場なんかじゃなく、馬小屋の裏でハミングしながら。足元は砂利敷きでステップもパーティーの時みたいに滑らかじゃなくて、だけど子供みたいに笑いながらくるくる回る。
 エンディングまできっちり見届けたうえで「駄作だな」と結論を出し、リモコンでスイッチを切った。だけど、もしかしたら二度と再生しないかもしれないんだけど、続編も手放すことなく、この広い部屋の収納の片隅に二本まとめて置かせてもらいたい。
 見上げたすぐそこにある頭が揺れる。ワルツのリズムみたいだ。