さまじろ女の為のじろさま/じろさま/2747

 もうじき不惑だ。それなりに鍛えているお陰で腕力ではまだまだガキに遅れは取らないが不摂生は確実に肉体を蝕んでじわじわとガタがきている。
 そんな立派な中年の体をソファなんぞに押し倒しやがって。床でも風呂でもどこでも平気で受け入れられるテメェの馴れた体と一緒にすんな。見下ろされると腹が立つ。
 でもエロい期待に満ちた目で薄く色づいた唇を舐める舌を見ていたらいっぺんぐらい我慢してやってもいいかという気になって両手両足を投げ出した。

 一ヶ月も抱えていた仕事が片付いて気持ちよく飲んでいた時だ。アイツが、いや、言い出したのは俺か。賭けをやろうと言い出して、機嫌がいいからお前が買ったら一つ言うことを聞いてやると約束した。そうしたらコイツ、三十過ぎても身持ち固く童貞を守ってやがるガキが俺様を抱きたいとぬかしやがった。まあいい。俺が勝てばいいだけの話。
 と思ったら負けた。テレビをつけてチャンネルを一度だけ回し、最初にピンで映るのが男か女か張る。アイツが先に女に張って、俺がリモコンをとってチャンネルを回した。テレビはそんなに見ないから狙うにも限界があるが、近年のタレント比率は男の方が確実に高い。実際、回したチャンネルは音楽バラエティ番組で出演者の半数以上が男だった。だが賭けの対象は「最初に一人で抜かれた人間の見た目上の性別」だ。男女二人並びの司会が街頭インタビューへの振りをやって映像が切り替わる。映し出されたのは、女だった。しかも「あなたの青春のアーティストは?」なんて質問に山田一郎の名前を挙げるような女だ。
 ガキはガッツポーズでやたら静かに喜びを噛みしめ、いやらしい手つきで俺様の肩を抱き寄せた。もっとずっと若い頃は俺の背を追い越すなんて息巻いておいて結局悲願を果たすことなく成長が止まったくせに。
 賭けなんぞやらなきゃよかった。そもそも店で飲んでりゃよかったんだ。悔いることはいくらでもある。何が悲しくて自他ともに認めるオッサンになってからエロガキに鼻息荒く胸なんか吸われなきゃならない。ンな場所を舌で突かれたってくすぐったさしかない。未成年の頃からあちこち開発されつくしたテメェとは違うってのが分からんらしい。ひとの乳首なんか舐めるよりこうされる方がいいだろうに、とシャツの上から胸をまさぐると「約束だろ!」と手を追い払われた。今「ンッ」とか言ったじゃねぇかよ。アホか。
 そうは言ってもコイツは上手い。キャリア十年以上のベテランだ。狭いケツの穴を開かせることにかけては一家言持っている。
「そんな嫌そうにすんなよ。痛くしねぇから。慣れたら気持ちいいから、な?」
 優しく言ってくるのがマジ腹立つ。これでヘタクソなら蹴りつけてこき下ろして手本を見せてやるだなんだ言って立場をひっくり返してやるのに、上手いのだ。上手くたって慣れないうちはさっぱり気持ちよくないが、痛くないし男の泣き所をよく弁えてる。ついでに言えば、あれもこれも仕込んだのは俺様だからセックスについてのあらゆる事柄については自業自得といえる。文句をつけると分が悪い。
 大人しくしているうちに指が突っ込まれてケツをまさぐられながら口の中には舌が入ってきた。こっちでやり返すことは禁止されていないが、どうにもケツをほじくられながらとなると気が乗らないから好きにさせた。
 許したのは今回が初めてになるが、コイツがずっと俺様を抱きたがっていたのは知ってる。直接頼み込まれる以前から。
 未成年の頃から散々抱いて女の役割を体に教え込んでやっても、風呂上がりだの、飯の最中だの、ステージを降りてすれ違う瞬間。汗ばむ首筋やむき出しの腕や、腰。自覚、無自覚を問わず欲まみれの男の目で俺を見てくる。ベッドで足を開かせる時とは別の色の熱がこもった。身の程知らずで童貞臭い夢見がちな。イカくさい望みをぶっ潰して完全に女にしてやりたくなるような目だ。
 実際状況が許せば服を脱がして立場ってもんを分からせてやったことも何度もある。掘られる方の良さには俺よりよっぽどハマりこんでやがるから、それでも最終的には文句を言わなくなる。だけど抱く側に回ることを諦めたわけじゃなかった。
 執念でついに本懐を遂げた元童貞は、それでも二十歳そこそこのガキみたいにはしゃぎまわることなくこっちの心配までしてくれる。
「はぁ……まだ全然よくねぇだろ。ごめんな。ごめん……、ゆっくりするから」
 お察しの通り、こっちは指で前立腺を擦られたところまでは良かったが本番に至ってはケツになんか挟まってる状態で男の良さに目覚めるには程遠い。こんなもんを二度目も受け入れたコイツは素質があったんじゃないかと改めて思うわけだが、その辺は肉体的な欲求だけの問題じゃないんだろう。
 興奮で潤んだ瞳がきれいだ。目の端に光が反射して。血色が良くなって唇が赤くなってる。ひとのケツでちんぽを扱いて目を細めて、声を我慢する代わりに湿った息を吐いた。
 見よう見真似でケツに力を入れたり抜いたりしてやると息を詰めて動きを止める。俺自身が自分の体の使い方に慣れていないせいで思い通りとまではいかないが、こっちが仕掛けりゃ素直に反応が返ってくる。
「ふはっ」
「笑うんじゃねぇよ……!」
 賭けの清算で仕方なくやらせたとはいえ珍しいもんが見られた。ダダ下がりしたテンションも多少は回復して首を引き寄せる。やる気を出して舌先を吸うともどかしそうに下半身を押しつけて深くねじ込んでくるのを腰を撫でてあやした。
 やっぱ俺はこっち側は向いてない。興奮で濡れたエロいつらを見てるとめちゃくちゃにしてやりたくなるが、思うまま動くには抱かれる側は不便だ。それにこんな甘ったれた舌使いのヤツに主導権なんか握らせておけるか。
 腰を支点にして揺さぶられる最中に、気が逸れている隙を狙ってシャツの裾からピン立ちの胸をつまんでやった。腰を振るリズムが乱れて苦情が来る。男のくせに胸で悦んじまうドスケベな体してる方が悪い。
 度重なる茶々入れをまめまめしく振り払いながらなんとかことを終えると、主張しすぎる落ち着きのないクソみたいなちんぽが萎んで抜け殻のようなゴムを引きずりながらずるりとケツから抜けていく。
 俺の方は覚悟したほどしんどくはなかった半面で、毎回コイツがよがり乱れるのを見て想像していたほどの悦さもなかった。初回なんてそんなもんだろう。それでも気にした顔をするから腕を貸して頭を撫でてやる。初心者なのに中折れせずに出来てえらかったでちゅね。
 二度目があるかは努力次第だが、思い出はもうくれてやった。もう一度賭けをやるならテメェもそれなりの掛け金を差し出さなきゃ釣り合わない。
 それに比べりゃ、そうやって素直に懐に甘えてる方が楽だろうよ。